◆・・・チョコレート争奪戦

「エドー!アルー!!おはよー・・・・・・・あれ?」
勢いよく扉を開けたのは良いものの、そこに在る筈の人物は、影も形もない。
「・・・おいてかれた・・・?」

「おばさーん!!おはよう御座いまーす!!」
タッタッタ・・と階段を駆け下りる、軽快な音が古い宿屋に響く。
「アラ、ちゃん、おはよう!もう出かけるの?」
先程の格好とは違い、はねていた髪はサラリと靡く、ブラウンの長髪に変わり、服もいつもの
服に着替えたようだ。
「ハイ!・・あのー・・隣の部屋の・・」
「あぁ!エド君とアル君ね!手紙、受け取ってるわよ」
そう言うと大きなエプロンのポッケから、メモを取り出しに渡した。
「なんて書いてあるの?」
「えー・・っと『先に行ってるからな!早く来いよー』だって・・・」
「・・・・・」
「・・・おいてかれた・・・」

____東方司令部
「たーいさ♪」
「何だ鋼の、私は忙しいのだ。散れ
酷っ!折角イイコト教えてやろうと思ったのになぁー♪」
エドワードがニヤニヤと笑いながらロイを横目で見る。
「・・・何だ。焦らさずとっとと言ってしまえ、そして散れ。」
「そーんなコト言って良いのかなー?・・・のチョコレートいらないのかなー?」
ロイの顔色が変わる。ついでに目の色も変わる。
「・・・・何だ」
「昨日がさー、台所貸しきってたんだよねー、しかも昨日、『別々に此処に来よう』とまで言った。」
本人は忘れて、今頃「おいてかれた」とか言って怒ってるかもだけどな〜とエドワード。
「・・だから?」
「決まってんだろ?今日はバレンタイン。此処でチョコ渡すに決まってんだろー?」
エドワードが得意げに言った途端、ロイの口調が変わる。
「はっはっは・・では鋼のに勝ち目は無いのだなー」
「はぁ?」
何の事かまったく分かっていないエドワード。
「軍に来るイコール軍の人間に渡すイコール私!!私しかいないだろう!」
なっ!?ンな訳無いだろ!?オレに渡すんだ!第一、渡すとしても大佐には本命は渡んねぇ!」
なっ!?そんな訳が無いだろう?ならば何故、この東方司令部まで来る必要があるのだ!?」
「何の話っスか〜?」
「「引っ込んでろ!!」」
二人が熱戦を繰り広げている間に、ひょっこり現れたハボック少尉は、突然怒鳴られきょとん、としている。
「なっ何怒ってんスか・・?ちゃんが来たんでわざわざ報告に・・・」
「「えぇっ!?」」
ハボック少尉をむりやり巻き込み、部屋の収納庫に隠れる。
「なっなっ?なっ!?」
「いいから黙っておけ!いいか、絶対喋るなよ!」
「ハボック少尉、協力して下さいよ!」
「・・・・・」
仕事がサボれるなら、もうどうでも良いか・・と思い、従うハボック少尉だった。

____東方司令部玄関口
「ハボック少尉、遅いな〜・・・大佐呼んできてくれる・・って言ってたのにー・・」
足をプラプラさせながら、壁にもたれていると、突然上から声が降ってくる。
ちゃん、どうしたの?こんな所で・・・」
「あっ、ホークアイ中尉!!・・じゃなくて・・リザさん!おはよう御座います!!」
「おはよう、いつもリザで良いって言ってるのに。で、どうしたの?」
忙しそうに沢山の資料を抱え、に話しかけるホークアイ中尉。
「あっ!渡したいもっえー・・っとリザさんまだ仕事中ですよね?また一段落ついたら会えますか?」
「えぇ、もう片づくわ。大佐捜してるんでしょう?部屋へ行くから、一緒に行く?」
「ハイ!」

『ホークアイ中尉が来たぞー』
『押すな鋼の!あっ、君も一緒ではないか!』
『いてててて、大佐、痛いっスよー』
収納庫の中でぎゅうぎゅう押し合いながら部屋の様子を伺うエドワード達。
「よいしょ、と。大佐、資料此処に置いておきますからね。」
ドサッと沢山の資料を大佐の机の上に置くと、在るべき筈の人物を捜す。
「おかしいわね・・まだ昼休みでも無いのに・・またサボってるのかしら・・・」
中尉がチラリと収納庫に目をやると、中の男性陣は内心ビクビクとビビりまくっていた。
「あっ、じゃあ良いんです。そんな大した用でも無いし・・・」
「そう?なら良いんだけど・・・」
「有り難う御座いました、じゃあ私、チョコ渡して来まーす!」
「今日はバレンタインだったわね。いってらっしゃい。」
礼を言いながら扉を開けると、足早に廊下を駆けていった。
「フー・・収納庫って結構狭いんだなー」
「中尉、ご苦労。もう休んでくれても良いぞ」
「あー、中尉。どうもー・・・」
ゾロゾロと収納庫から出てきた男性陣に、フゥーっと深い吐息のホークアイ中尉。
「何やってるんですか?大佐。仕事して下さい。」
「・・・コレが終わったらやる」
「コレとは?」
「・・・君からチョコ貰ったら、やる」
「貰えなかったらどうするんですか?」
「・・・・・」
言葉を無くすロイを哀れに思ったのか、中尉は止めるのをやめた。
「・・・なるべく早く戻って来て下さいね・・・」

「今までの行動パターンからして、は好きなものは先に食べるタイプとみた。」
「だから何なのだ?」
突然の生態系について語り出すエドワード。一体何が言いたいのやら・・・
「つ・ま・り!好きな奴には最初に渡す!ってコトだ!!」
「そうなんスか〜?」
「そうなんだ!!」
半信半疑な二人を差し置き、自信満々に答えるエドワード。
くだらないコトを言いながら廊下の角からの様子を伺う一行。周りから見ると思いっきり不審者だ。
「あっ!アルー!!ハッピーバレンタイーン♪もう、先行っちゃうから捜したよー」
『えっ?ゴメンね!有り難うー。』
「・・・今のナシ。は好きなモンは間に食うタイプだ・・・った様な気が・・」
自分の弟が始めに貰ったのを見ると、突然別のコトを言い出した。
「だから?」
「だ・か・ら!本命は間に渡すんだよ!!」
「ハボック少尉知らない?」
『ハボック少尉?まだ見てないな〜』
「・・・俺、呼ばれたんで行ってきますね。まっ、せいぜい頑張って下さい」
唖然とする二人を差し置いて、ひょうひょうと出て行くハボック少尉。
「鋼の・・・」
「・・・は好きなモンは好きなモンは最後に残す!・・かも?・・・だといいな・・・・みたいな。」
先程までの自信は一体、何処へ消えてしまったのだろうか。
「そうだとも!君は好きな奴に最後に渡すはず!女性ならば大体そんなモンだろう!?」
「ハボック少尉、エド知りません?あと大佐も居ないんですけど・・・」
「エドと大佐?」
チラリと廊下の角に目をやると、二人が揃って嬉しそうにやって来た。
「やーっぱりはオレだよなぁー♪もぅ最高っ!!」
ダッシュしてに飛び付きに来るエドワードを引っ剥がすロイ。
「フフフ・・やはり大人の魅力だな・・君の選択は正しい!」
「なっ?何の話ですか??あっ、ハッピーバレンタイン!チョコ貰って下さーい!」
「勿論受け取るとも!有り難う君。あー、やっぱり良いなぁー・・本命は。」
「なっ!?んな訳ねーだろー!あっ、サンキュー!」
ギャーギャー言い争ってる間には突如、中庭に走っていく。

____東方司令部中庭
「・・・まぁ貰えるわけないよねぇー、第一敵っぽいし。なーにが「好きなモンは最後に残すー」だ。やってらんないねー。」
木の上でハァ、と物悲しげに溜息をつくと、薄目を開けて夢の世界へ引きづり込まれようとしていた。
「いいよっ、別にィー、気にしてないしィー。ラストおばはんから貰った不味いヤツで我慢するからさぁー」
「えー、私のも受け取ってよー」
一瞬目を丸くさせると、足をすべらせドスンッと地に落ちた。
「わっ!?エンヴィー、大丈夫??」
「えっ!???」
「おはようエンヴィー。さっき姿が見えたような気がしたから・・・」
「えっあっあの、エート・・」
動揺しまくりなエンヴィーにスッと箱を差し出す。
「受け取ってくれる?」
フ、と優しい笑みを浮かべながら箱を受け取るエンヴィー。
は優しいなぁー。ありがとっ、」
「どういたしましてっ、ハッピーバレンタイン」
今頃になっては何処かと騒ぎ出すエドワード達であった。

―――と言うことはエンヴィーが本命なのかって?
まだ続きがあるんです

「あっ!エンヴィー、じゃ、またね!!」
「えっ!?あっ、ウン。バイバイ」
上機嫌なエンヴィーが見守る中、先程の廊下まで疾走して行く
「あっ!!は好きな奴に最後に渡すんだよな!?」
「だから私なのだろう??」
「えっ!?何の話??」
状況を飲み込めず、頭にクエスチョンマークを浮かべている
「あっ!中尉ー!!ホークアイ中尉ー!!」
通り過ぎようとした中尉を呼び止めて、勢いよく走っていく。
「ハイvハッピーバレンタイン!リザさん!受け取って下さい!!」
絶句する男性陣。
「有り難う、ちゃん。・・・あら、最後に渡すのは本命じゃないの?」
男性陣を哀れに思ったのか、一応聞いてみる。
「えっ?そんなコト無いですよ!?リザさんに渡すの忘れてたんで最後なんですけど・・・」
脱力してヘロヘロになっている男性陣を差し置いて、中尉がポケットから小さな箱を取り出す。
「ハイ、ちゃん。ハッピーバレンタイン」
「有り難う御座いますっ!リザさん大好き〜v」
ピョンピョンと中尉に抱きつくを遠い眼差しで見つめながら
来年は頑張ろう、と心に強く誓う男性陣であった。

−*−END−*ー

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−あ と が き−
いやー何だかオチもなけりゃ文才も無いですがなんとか14日にUP出来たので良かったですー。
結局リザさんオチ(笑)エンヴィーも出せたので良かったー・・(ォィ
ウチんトコのエドは阿呆です。大佐はもっと阿呆です。ハボさんは結構まともな部類に入ります(笑
では、お読み頂き有り難う御座いました!
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